「全人医療」への移行を

「全人医療」という言葉は、多くの人にとって聞きなれないかもしれませんが、漢方などの東洋医学に携わる人なら”当たり前”の視点なのです。

私たちが病気になって病院へ行くと、医者はその「病巣」のみを注視する傾向が強いのです。
医者や看護師は、病巣を見ることに精一杯で、患者の気持ちや心地よさなどにまで配慮ができる医療関係者はきわめて少ないのが現状です。

言い換えれば、病院へ入ったとたん、私たちは心を持った一人の人間としてではなく、あたかも物のように扱われると言っても過言ではありません。
「この人は心臓が悪い」となったら、心臓という臓器=器官=物体、という考えに陥ってしまうのです。

端的に言うと、修理工場に入れられた自動車のようです。
良い悪い以前、理由の如何を問う以前に、このような非人間的な見方で扱われた日には、大いに怒る人があっても不思議ではありません。

吉田医師は、お父さんが大腸癌の手術で入院したときのことを振り返ります。
お父さんは、「のどが痛い」、「痰が出にくくて苦しい」と訴えました。
のどは切った場所ではありません。看護師に告げても、何の処置もしてくれませんでした。
吉田医師はひと晩中、30分おきくらいに看護師を呼んでは、痰の吸入をさせました。
しまいに看護師は、迷惑そうにしたり行きたくないといった態度をとりました。

吉田医師は、翌日加湿器を病室にセットします。
考えてみれば、冬のさなかただでさえ乾燥しているところへもってきて、鼻からも口からもチューブが挿入され、口は開きっぱなしです。

果たしてお父さんの痰は切れるようになり、のどの痛みも和らぎました。
医者や看護師は、病変部位、対象部位以外には関心を寄せたがらない傾向がはっきりと見て取れます。

病人は、健康な人よりも元気を失っているのですから、より快適な環境を提供することは、病気の回復につながるはずです。
患者はお客様なのだからおべっかを使えとかそういうことではなく、人間を一人の人間として見るという当たり前のことができなくて、その病院や医師を信頼しろと言うほうが無理な話でしょう。

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