「入れる」医療から「出す」医療へ

現在の医療は、患者の身体に薬を投与することを真っ先に考える傾向が強いものです。

この了見は、感染症や怪我などに対しては著効を示すことは言うまでもありません。
要するに、西洋医学とは、緊急を要する疾病、障害に対してはひじょうに適しているのです。

西洋薬の普及は、大戦後に肺炎の特効薬として広まったペニシリンや、結核の特効薬ストレプトマイシンの出現など、抗生物質の普及にその端を発します。

現に昭和20年代後半以降の約10年の間に、それまで死亡率1位を占めていた結核が10位以下に下がりました。

薬は命を救ってくれる天からの賜物かとも思えるような劇的な成果を見て、人々の”薬信奉”が湧き起こったと言うことができます。

抗生物質のほかにも、胃潰瘍薬や降圧薬、麻酔薬などの優れた薬剤の開発がなされ、人々の薬信奉に拍車をかけました。

また、戦後には外科手術も躍進を見せます。
抗生物質の開発や輸血の技術の発達などにより、「入れる」医療が医学界を強力に牽引したことは事実です。

ところが、高度成長期を迎える頃になると、感染症の減少に取って代わるようにして、慢性疾患、今で言う生活習慣病や、免疫異常によって起こるアレルギー性疾患の増加が目立ってきます。

1960年代以降、従来の薬や手術では解決できない慢性疾患に対して、新たな治療法を探ろうと、学界では血道をあげて研究に没頭していますが、こんにちに至るまで”吉報”は聞こえてきません。

肺炎を駆逐し結核を殲滅した「入れる」医療は、”新たな強敵”の前になすすべがないという現実を、私たちは思い知らされつつあるのです。

ところが、生活習慣病は、「入れる」医療に頼る事態になる前から、ライフスタイルすなわち生活習慣を改善することで、いわゆる”予防医学”の視点を取り入れることで改善されることがわかってきています。

言い換えれば、病気の原因を発病前に「出す」という考え方です。

「入れる」医療を完全に捨て去ってしまう必要はなく、「出す」医療をもっともっと重視すべきだ、と考えるわけです。

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